加工時間短縮や工数削減などを目的とした小径エンドミルでの加工事例

小径エンドミルでの加工

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日進工具では、切削工具の「小径エンドミル」を主とした工具や加工技術で、生産現場の加工能率向上・コスト削減などお客様の課題解決に役立てていただくような研究開発を行っております。その中で、荒加工時に使用する工具サイズを小さくすることで、コスト削減や加工時間短縮が可能になった事例をご紹介いたします。

工具サイズと加工能率

切削加工の改善には様々な方法がありますが、新たな機械を導入するとなるとコスト面などで相応のリスクを考慮しなければなりません。そこで設備などの改善ではなく、加工の考え方を変えることでコスト削減や加工時間短縮が実現できるかを検討してみました。

通常、切削加工において、コスト削減や加工時間短縮を図る方法のひとつとして、単位時間あたりの切り屑排出量を多くする方法(高能率加工)が挙げられます。この方法は、剛性の高い、できるだけ工具径の太い工具を使用することで荒加工の時間短縮が図られるため、高能率加工の進め方として多くのユーザーで検討されていることと思います。

しかし、現在では精密な金型を加工するユーザーの間では高速加工機が普及しており、使用可能な工具サイズが主軸剛性面の影響で限定されてしまうことが多いので、工具径を太くすることによる高能率加工は難しくなります。

仕上げ加工時の精度を考えると、最終仕上げ時の切削負荷が少ない状況で安定させて加工を行うことが高精度な加工をするときに有効です。しかし、太いサイズの工具で荒加工を行うと、仕上げ代の均一化が難しく切削負荷が安定しないので、仕上げ加工に不利な状況となってしまうことがあります(図1)。

図1
図1 仕上げ代の考え方の例

そこで、加工効率を上げると同時に、精度を高められる方法が無いか検討しました。
今回ご紹介させていただく事例は、荒加工に使用する工具サイズを出来るだけ小さくすることで切削負荷を安定させ仕上げ加工で有利にし、最終的にはコストや加工時間の改善を図ろうという考え方になります。
日進工具では、今回紹介させていただく事例を含め、小径工具を有効活用した各種提案を『STUP(Small・Tool・Users・Promotion)』として、行っております。

「STUP」に基づく加工事例

図2
図2 テスト形状(80×60×35mm)

図2に示す形状をモデルケースにし、従来の加工法とSTUP提案(小径工具を有効活用した各種提案)でどのような違いがあるか確認してみました。
(荒加工時の最終使用工具はR3と設定)比較は、荒加工に単位時間あたりの、切り屑排出量に有利なR5を使用し、その際に発生した取り残し部の加工にR3を使用した場合【従来法】と、荒加工をR3のみで加工した場合【STUP提案】で行います。なお、被削材はSKD61(48HRC)、加工条件を表1に示します。

表1
表1 切削条件表
図3
図3 【従来法】荒加工後状態

エンドミルを使用して切削を行なう際、荒加工で多くの体積を除去させるためできるだけ太い工具を用い、徐々に細い工具を使用してゆくのが一般的だと思います。しかしその場合、加工形状により工具が進入できない箇所が発生し、多くの取り残しができることがあります(図3)。
この取り残し部分の除去には、荒加工時に使用した工具より細い工具を使用しますが、切削負荷が不安定になり、切り込み量や送り速度を調整しながらの加工が必要で、多くの時間を要してしまいます。

図4
図4 【従来法】
取り残し加工後の工具状態(R3)

今回の場合、従来法では取り残し加工時に切り込み量を少なくし、送り速度も下げて加工を実施したが、加工後の工具を確認すると、図4のようにチッピングが発生していました。

取り残し加工などの切削負荷が安定しない状態での加工は、どれだけ工具寿命に影響するか感じていただけると思います。そして、チッピングの発生している工具での加工面へ仕上げ加工を行っても、加工面品位へ悪影響を及ぼす事が簡単に想像できます。

表1に示すとおり、総加工時間が従来法で57分を要していたが、STUP提案では、取り残し部分を発生させずに加工できた為、36分で加工が可能できました(図5)。
なお、STUP提案で使用した工具は荒加工後でもチッピングなどが発生していませんでした(図6)。

図5
図5 【STUP提案】荒加工後状態
図6
図6 【STUP提案】荒加工後の工具状態(R3)

工具費においても、従来法では2本使用しましたが、STUP提案では1本で加工完了となり、工具費削減ができました。今回ご紹介させていただいた事例は、小径工具での荒加工を行なうことで、取り残し部分の加工を少なくでき、工程改善につながりました。
STUP提案は、すべての切削加工において合致する訳ではありませんが、多くの取り残しが発生して後工程時の切削負荷が不安定になる状況であれば、検討してみては、いかがでしょうか。

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