複合微細溝形状への加工における加工工程とツールパスの考え方。

複合微細溝形状の加工事例

メイン画像

複合微細溝形状における加工方法提案

MONOTOOLBOX ではここ数回に渡り、極小径サイズでの仕上げ加工における加工方法を提案してまいりました(□1mmポケット加工における仕上げ工具の寿命向上微細ポケット形状における加工精度向上)。今回は高硬度材における複合微細溝形状への加工事例となっており、工具選定および加工工程・ツールパスの改善案をご紹介します。特に加工工程・ツールパスにおいては、細かな工夫を施しておりますので是非ご注目ください。



複合微細溝形状の詳細

凹R0.55に2種類の溝が複数存在する下図のような加工形状において、どのような加工方法・加工工程を用いますか?

ポケット加工

被削材:K340 60HRC (BÖHLER 社製)

ワークサイズ:15mm×15mm×5mm


溝形状

溝形状A 溝長 深さ
8 mm 0.528 mm
ポケット加工
使用可能な工具サイズ R0.5以下
溝形状B 隅R 深さ
R0.1 0.813 mm
ポケット加工
使用可能な工具サイズ R0.1以下
溝形状C 隅R 深さ
R0.1 0.555 mm
ポケット加工
使用可能な工具サイズ R0.1以下




加工パターン①




無限コーティングプレミアム
MRBH230 R0.3×1
ポケット加工 ポケット加工
工具軌跡:等高線
ポケット加工





無限コーティングプレミアム
MRBH230 R0.1×0.75
ポケット加工 ポケット加工
工具軌跡:等高線


結果

溝形状B&Cにおいて、切削初期時に工具が折損しました。

原因

溝形状Aを加工後、溝形状B&Cを等高線荒取りで加工した場合、溝加工と側面加工が混在するため、加工が不安定となりました。

加工パターン①からの対策:溝加工と側面加工が混在しない、安定した加工方法を選定する。





加工パターン②






無限コーティングプレミアム
MRBH230 R0.1×0.75
ポケット加工 ポケット加工
工具軌跡:溝加工
ポケット加工



無限コーティングプレミアム
MRBH230 R0.3×1
ポケット加工 ポケット加工
工具軌跡:等高線


結果

溝3本目の加工途中で工具が折損(切削時間は約7分)しました。

原因

工具折損前の摩耗状態を確認したところ、工具摩耗の進行による工具寿命と判断。

加工パターン②からの対策:溝形状B&Cに対して、耐摩耗性に優れたcBN工具を採用する事としました。





加工パターン③






cBN工具
SSBL200 R0.1×0.6
ポケット加工 ポケット加工
工具軌跡:溝加工
ポケット加工




無限コーティングプレミアム
MRBH230 R0.3×1
ポケット加工 ポケット加工
工具軌跡:等高線


結果

溝形状B&Cの全12溝(深さ0.6mmまで)の荒取り加工工程において、cBN工具1本で加工可能であった。また、加工後の工具摩耗量も少なく、継続して使用可能と思われる。

SSBL220 R0.1×0.6
すくい面 外周部 R先端部
ポケット加工 ポケット加工 ポケット加工
写真 溝形状B&C 荒取り加工および中仕上げ加工後の工具摩耗状態


photo

※1 溝B&Cで溝加工を行った工具で中仕上げ加工(スパイラル)も行っております。
※2 深さ0.6mm〜0.808mmの間の加工となります。



加工後のワーク状態
ポケット加工
photo


まとめ

加工条件・工程におけるポイント

● 加工パターン①において、溝Aから加工を行い次に溝B&Cを行った場合、溝加工と側面加工が混在したことにより初期段階で工具折損となった。よって、加工工程のスタートは溝B&Cより開始し、その際等高線荒取り加工ではなく、溝加工で行いました。さらには深さ0.05mmまでは溝の曲がりを抑制する為、切り込み量を少なくして加工を行っております。

ツールパス 深さ0.05mmまで ap=0.001mm
ポケット加工 ポケット加工 ポケット加工

● 溝B&Cの溝加工では、深さ0.6mm加工後すぐには中仕上げ加工は行わず、溝Aの溝加工→等高線荒取り加工を経てから加工を行っております。その理由として、溝Aの加工の際、溝B&Cの上部にはバリが発生すると考えられ、仕上げ加工のみでは取り切れないと判断した為、この様な加工工程を設定しました。結果、溝部分の拡大写真において、バリの発生はほとんど見られておりません。



おすすめ記事

TOP