エンドミルによるバリの発生原因と対策を考えてみませんか?
前回からバリへの対策という事でスタートしました本企画。今回は第二回目の「切削条件編」となります。回転数・送り速度・切り込み量・切削方向 等々多岐にわたって切削条件はございますが、今回は特に切り込み量に着目したテストについてご紹介します。
② 厚きバリへの挑戦:切削条件編
切り込み量aeの違いによるバリの観察
スクエアエンドミルでの側面切削加工(ダウンカット)で、半径方向切り込み量aeの違いによる工具摩耗状態とバリを比較しました。
なお、本コンテンツ内では 薄い < やや薄い < やや厚い < 厚い とバリの根元の厚みを4段階で評価しておりますが、数値的な基準はもうけてはおりません。バリの写真等も載せておりますが、写真の写り方ではなく、当社作業者による厚さに関してのコメント(4段階評価)を正としております。
工具 | MX430 Φ3 4枚刃 30° ネジレ 無限コーティング |
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被削材 | S50C | |||
切削条件 | A | B | C | D |
回転数 n(min-1) | 6,900 (Vc=130m/min) | |||
送り Vf(mm/min) | 420 | |||
切り込み量 ap(mm) | 6 | |||
切り込み量 ae(mm) | 0.15 | 0.3 | 0.45 | 0.9 |
1分間あたりの除去量 ae(mm3/min) |
378 | 756 | 1,134 | 2,268 |
切削方向 | ダウンカット | |||
クーラント | エアーブロー |
※NS総合カタログの切削条件参考表値使用
切削初期のバリ及び工具摩耗状態
切削条件 | 条件A (ae=0.15mm) |
条件B (ae=0.3mm) |
条件C (ae=0.45mm) |
条件D (ae=0.9mm) |
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外周部 | ||||
外周部 境界 |
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上面部 バリ |
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バリの 厚み |
薄い | 薄い | 薄い | 薄い |
切削長10m加工後(加工時間:約24分)のバリ及び工具摩耗状態
切削条件 | 条件A (ae=0.15mm) |
条件B (ae=0.3mm) |
条件C (ae=0.45mm) |
条件D (ae=0.9mm) |
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外周部 | ||||
外周部 境界 |
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上面部 バリ |
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バリの 厚み |
薄い | 薄い | 薄い | やや薄い |
切削長25m加工後(加工時間:約60分)のバリおよび工具摩耗状態
切削条件 | 条件A (ae=0.15mm) |
条件B (ae=0.3mm) |
条件C (ae=0.45mm) |
条件D (ae=0.9mm) |
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外周部 | ||||
外周部 境界 |
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上面部 バリ |
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バリの 厚み |
やや薄い | やや薄い | やや薄い | やや厚い |
切削長50m加工後(加工時間:約120分)のバリおよび工具摩耗状態
切削条件 | 条件A (ae=0.15mm) |
条件B (ae=0.3mm) |
条件C (ae=0.45mm) |
条件D (ae=0.9mm) |
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外周部 | ||||
外周部 境界 |
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上面部 バリ |
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バリの 厚み |
やや薄い | やや厚い | やや厚い | 厚い |
切り込み量とバリの関係
以上のテストから、切り込み量とバリの関係は下記のようにまとめられます。
切り込み量 | 小 | 大 |
加工能率 | 低 | 高 |
工具寿命 除去量基準 (※補足資料あり) |
短 | 長 |
バリ取れやすさ (大きさ・厚み) |
易 | 難 |
条件Aにおける切削長50m加工後(加工時間:約120分)と
条件Dにおける切削長10m加工後(加工時間:約24分)の比較
※除去量基準での比較
切削条件 | 条件A (ae=0.15mm) |
条件D (ae=0.9mm) |
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除去量 ae(mm3/min) |
45,360 | 54,432 |
外周部 | ||
外周部 境界 |
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上面部 バリ |
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バリの 厚み |
やや薄い | やや薄い |
まとめ
バリの量は切り込み量に比例しますが、同時に切削長(工具摩耗幅)にも比例していきます。上記の比較は除去量基準で比較しており、切り込み量ae違いにおいて、おおよそ同程度の除去量となっております。切削長が短い(=加工時間が短い)、条件Dの方が工具摩耗幅も必然的に小さく、バリの発生量も条件Aと変わらない状況となります。場合によっては、切り込み量を大きく取り、切削長(=加工時間)を短くし、工具摩耗が進行していない間に加工を終える事でバリの発生量をコントロールすることも可能といえます。