「エンドミル用コーティングを知る」【基礎編】をご紹介します。
是非、貴社の切削加工の向上にお役立てください。
目次
コーティングの種類
コーティングには様々な種類があり、用途に応じて最適なものを選択することができます。
コーティングは工具の性能を左右する重要な要素であり、これらの代表例の他にも新組成・多層構造の高性能なコーティングが発表されています。
コーティングプロセス(成膜法)
コーティングプロセスは皮膜形成のメカニズムの違いから、CVDとPVDの二つに区別されています。
CVD(Chemical Vapor Deposition)
皮膜材料に気体(ガス)を用い、化学反応によって皮膜を形成します。良好なつきまわり性が特長ですが、一般的に処理温度が高く、成膜できる基材が限定されます。
PVD(Physical Vapor Deposition)
固体の材料(ターゲット)を用い、物理的な反応によって皮膜を形成します。CVDよりも低温で密着性の良好な成膜が可能なため、超硬ソリッドエンドミルへのコーティングに多く使用されています。
アーク放電方式(PVD)
アーク放電により固体材料を蒸発・イオン化し、工具表面に堆積させます。
成膜速度が速く密着性も良好ですが、ドロップレットとよばれる皮膜形成には寄与しない粒子の付着も見られます。
ホローカソード放電方式(PVD)
電子銃から照射された電子ビームにより固体材料を蒸発・イオン化し、工具表面に堆積させます。
アーク放電方式に比べ、ドロップレット状の粒子の付着が少ない緻密な皮膜が得られます。
スパッタリング方式(PVD)
アルゴンイオンを固体材料にぶつけ、表面からはじきとばされた材料原子を工具の表面に堆積させます。
成膜速度は遅いものの、ドロップレットが発生せず、格段に平滑な表面状態が得られます。
ドロップレット(マクロパーティクル)
アーク放電によりターゲット表面から放出される微少粒子。アーク放電を用いた成膜において不可避的に発生する不純物で、マクロパーティクルとも呼ばれます。
面粗さの低下を招き、脱落後のクレーターから酸化が進行するなど、品質面でマイナスの影響を及ぼします。
無限コーティングシリーズ
無限コーティングシリーズは工具性能を飛躍的に向上させるNSオリジナルコーティングです。私たちの基本方針は、安定した製品づくりを確立し、常にお客様に信頼される製品をご提供する事です。
下記のグラフは、製造日の違う3本を用意し、寿命テストを行った結果です。いつお使いいただいても寿命のバラツキが少なく、安心してご使用いただけることを目指しています。
様々な被削材に対応する『無限コーティングシリーズ』
- 無限コーティング:優れた汎用性
- 無限コーティングプレミアム:高硬度材向けに最適化
- 無限マイクロコーティング:マイクロ工具専用コーティング
無限コーティング
無限コーティングは、数百点の成膜条件より選定されたTiAlN系のコーティングです。皮膜硬度Hv3,400、酸化開始温度1,100℃と高い特性を持っています。生材・銅から焼き入れ鋼までの幅広い硬度に対応した汎用性の高いコーティングです。
無限コーティングプレミアム
無限コーティング プレミアムは、高硬度材向けに新開発された高性能複合皮膜です。皮膜組成と層構造を一新し、既存のコーティングを大幅に超える硬度Hv3,600と酸化開始温度1300℃を達成しました。特に、高硬度領域の48~68HRCにおいて、長時間にわたり安定した加工を実現します。
無限マイクロコーティング
無限マイクロコーティングは、マイクロドリル(ø0.1以下)向けに開発した極薄膜コーティングです。
膜厚のコントロールやドロップレットの付着などから、従来技術ではマイクロ工具への適用は困難でした。今回新たに開発した成膜技術では、ドロップレットの大幅な抑制に成功し、密着性に優れた耐摩耗性極薄膜の安定処理が可能となりました。
TiAlN系の膜種を採用し、鋼材やステンレス材などへ安定した穴あけ加工と長寿命化を実現します。