コラム | 工具の学び舎 | 基礎編

工具のサイズ選定を知る

【基礎編】「工具のサイズ選定を知る」のご紹介です。2019年5月の更新記事『高精度加工を実現する適切な工具の選択』内で、テーパーネックボールエンドミルと、ロングネックボールエンドミルのご紹介をいたしました。今回は日進工具のカタログにも記載しております ”有効勾配角” と ”実有効長” の説明、およびサイズ選定をどの様に行うか。また工具のたおれについても説明をしてまいります。

目次

  1. テーパーネック形状のサイズ選定
  2. 工具のたおれ
  3. テーパーネック形状における有効勾配角
  4. ロングネック形状における実有効長

テーパーネック形状のサイズ選定


まずはじめに日進工具のテーパーネックエンドミルシリーズ(以下シリーズ一覧)におけるサイズ選定の方法を説明いたします。

日進工具のテーパーネックは全ての製品がワークの勾配角と同じサイズを選定いただけます。上図の様に、ストレートの刃長とさらには首下長によりクリアランスを設けており、結果ワークの勾配角と同一の首角(呼び寸法)を選定する事が可能となっております。

工具のたおれ

たわみの計算式からわかる突き出し量と工具径の関連性

工具のたおれ量(たわみ)の算出は以下の計算式で可能ですが、、、

※断面二次モーメントは中実丸棒

この計算式から、工具径と突き出し量が密接に関連していることがわかります。仮に突き出し量が2倍となった場合はその3乗にたおれ量が比例することとなります。一方、工具径とたおれ量の関係は、その4乗に反比例することとなります。

例えば径で 1mm と 1.1mm という僅かな違いが、計算上 1.46倍 の差となり、工具のたおれ量に影響を及ぼします。

今回は、たおれ量を少なくする為に、少しでも工具径を太く、少しでも突き出し量を短くという観点から考えられた、テーパーネック形状における「有効勾配角」と、ロングネック形状における「実有効長」に関してご紹介いたします。

テーパーネック形状における有効勾配角

少しでも剛性を高める、が強く意識された
「MRBTNH230」

壁部と工具の隙間を小さくすることで、有効勾配角も、壁部の勾配角と非常に近い数値で設定しております。径を大きくし工具剛性を高めるという設計思想から、焼入れ鋼の加工においても工具のたおれを最小限に抑え高精度な加工を行う事が可能となっております。

ここで工具剛性を意識したテーパー部の最適化がどの程度効果があるのか、他社品と比較した加工事例をご紹介します。

テーパー形状を最適化して工具剛性を高めた

高硬度用ロングテーパーネックボールエンドミル MRBTNH230
MRBTNH230

ロングネック形状における実有効長

少しでも短く、が意識された「実有効長」

たわみの計算式から、突き出し量はたおれ量に対して3乗に比例します。仮に突き出し量が2倍となった場合、計算上たおれ量に対しては8倍の影響を及ぼすといえます。したがって、少しでも突き出し量が短い工具、ロングネック形状のものにおいては有効長が短い工具を選択する事が工具のたおれ量を抑えるのに有効であるといえます。

実有効長の説明

そこで日進工具のロングネック形状の製品のほとんどで 「実有効長」 というサイズを規格表(サイズ一覧)の中に記載しております。

実有効長

例として、、、

高さ10mm・勾配が3°の壁部において、R0.5 ボールエンドミルを選定する際、上記のサイズ一覧表から有効長 8mm のサイズ選択でも実有効長が 10.61mm となり、干渉する事なく加工を行う事が可能となります。この 2mm の違いが、たわみの計算式においては 1.95倍 の差を表します。

まとめ

今回はたわみの計算式から、たおれ量へ影響が大きい工具径・突き出し長さに繋がる 「有効勾配角」・「実有効長」 をご説明いたしました。いずれも非常に聞きなれない言葉とは思いますが、その背景が工具の剛性を最大限化し、工具のたおれ量を抑え、高精度な加工を行える事を目的としていたと、ご理解をいただけたと考えております。

工具の学び舎

基礎編

アプリケーション編

TOP